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2006.3.2 カラーゼの悲劇

 グルジア人のカハ・カラーゼは私が応援するイタリアのサッカーチーム、ACミランの選手である。完全なレギュラーとはいえないが、レギュラークラスの選手だ。相手や状況によって、先発で出るか控えにまわるかという選手。しかし今シーズンはマルディーニの故障などがあり、ほとんどレギュラーとして先発出場していた。ポジションはDF(ディフェンダー)で、左サイド、右サイドさらにはセンターバックもできる、DFとしては最高の選手である。控えの場合があるのはACミランだからこそなのだ。

 例えば日本代表レベルのDFと比べてどうかなどと質問しないでほしい。レベルが違う。アジアにも、北米にも、アフリカにもカラーゼくらい守れるDFなどいない。また守備のレベルが低いスペインリーグやフランスリーグなどへ行けば、トップチームでもたちまちレギュラーである。彼が準レギュラーなのは世界中探してもACミランとユベントスくらいであろう。彼が2001年にウクライナのディナモキエフからACミランに移籍してきたときの移籍金が、日本円にして約22億円だったことを書き添えておこう。

 ところがそのカラーゼが先週のセリエAの試合にはいなかった。そしてその理由は、弟さんの葬儀に帰っていたからである。彼の弟さんは病死でもなければ、事故死でもない。なんと誘拐されて殺害されたのである。これは以前からの事件であり、誘拐犯グループは身代金をカラーゼの母国グルジア政府に要求していたが、政府はそれを拒否。カラーゼ自身は休暇で祖国に帰るたびに、政府になんとかしてくれるように要望していたのだが、事件は最悪の結末を迎えたのだった。

 そしてカラーゼは弟さんの遺体確認の報を受けていながら、チームメイトに隠して、セリエAを1試合と、重要なチャンピオンズリーグのバイエルン戦を戦っていたのである。しかし今週は葬儀で帰って行った。

 カラーゼのいない今週の試合、パレルモ戦でACミランは苦戦。しかしネスタを中心にDFは皆、頑張った。相手を0点に抑え、インザーギのシュートとシェフチェンコのゴールの2点で勝ちきった。インザーギの「このゴールをカラーゼにささげたい。」のコメントがすべてを物語っている。

 このカラーゼの事件すらきちんと報道しない日本の低レベルのスポーツ記者や新聞にはあきれる。五輪でメダルが1個だったのは誰の責任か?とか、くだらない“メール問題”とかが毎日報道されることについても同じだ。まさに平和ぼけである。

 カラーゼの弟さんのご冥福を祈るとともに、今後のカラーゼのより一層の活躍を応援しながら、見守っていきたい。(No53 了)  風花良